除菌するならアルコールが定番でしたが、昨今他の商品にも注目が集まっています。
そこで登場してきたのが次亜塩素酸水です。
「次亜塩素酸水ってどんなものなの?」
「アルコールって今まで使ってきたけど成分とか知らないな…」
次亜塩素酸水はもちろん、アルコールのことも詳しいことはよく分からない人はたくさんいると思います。
目次
アルコール消毒液とは?
- 10秒間という短時間で殺菌・消毒できる
- すみやかに乾燥するので、残留性がない
主な特徴は上記の通りで、一番手軽に消毒できるアイテムだと思います。
でもアルコールってどんなものか知っていますか?なんとなくみんなが使っているから自分も使っているという人が多いのではないでしょうか。
以下では、普段使っているアルコールはどんな成分なのか、除菌の仕組み、効果のある細菌・ウイルスについて解説していきます。
アルコールの種類
アルコールにはいくつか種類があり、代表的なのが「飲用としてのアルコール(お酒)」、「エタノール」、「イソプロピルアルコール」、「メタノール」です。
そのうち、ヒトへの毒性が相対的に低い「エタノール」と「イソプロピルアルコール」が消毒用に利用されています。
特に「エタノール」は数あるアルコールの中でも安全性が高く、除菌効果も高いので最も利用されているのです。
一方「メタノール」はアルコールランプにも使われる燃料ともなる物質で、人体に有害です。
誤飲してしまうと失明し、最悪の場合死に至るので絶対に飲んではいけません。
アルコール除菌のメカニズム
エタノールは細菌やウイルスのタンパク質に直接アタックして死活、あるいは不活性化させます。
細菌の細胞膜を破壊し、ウイルスの場合は「エンベロープ」を破壊することができます。
エンベロープとは、脂肪・タンパク質・糖タンパク質からできている膜で、ウイルスが増殖して細胞から飛び出してくるときに細胞の成分をまとって出てきたものです。
ウイルス類には、外殻にエンベロープを持つもの(ウイルスル類の80%)と持たないものがあり、エンベロープを持たないウイルスの方が強靭です。
また、タンパク質の変性や代謝機能の阻害、溶菌作用などがあり、それによって除菌できるようになっています。
引用:サラヤ公式サイト
そして最も効果を発揮するエタノールの濃度は70~80%となっており、これは日本薬局方でも規定されています。
pHを酸性にすることで幅広いウイルス・細菌に有効にすることができ、リン酸を配合することでより効果的にしているアルコール消毒の商品もあります。
除菌できる細菌・ウイルス
- 病原性大腸菌
- 黄色ブドウ球菌
- 腸炎ビブリオ
- サルモネラ菌
- インフルエンザウイルス
- HIVウイルス
- コロナウィルス
食中毒に代表される病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ菌といった細菌や、エンベロープをもったウイルスに効果があります。
近頃流行しているコロナウィルスにも効果があるのが魅力的ですね。
- ウェルシュ菌
- セレウス菌
- ボツリヌス菌
一方、アルコールで除菌ができないのはウェルシュ菌、セレウス菌、ボツリヌス菌のような芽胞を形成する細菌です。
芽胞とは、菌が生存に適さない環境(高温環境・乾燥環境・栄養状態が悪い環境など)になると体内に形成する固い殻のこと(バリア機能)です。
芽胞は強固なため、薬剤や熱、乾燥にも大変強く、アルコールの効力はありません。
また、ウイルスの場合はノロウイルスなど、エンベロープを持たないウイルスに対しては効力を持ちません。
使用上の注意
- 乾いた手に付ける
アルコール濃度が薄まってしまい、除菌効果が落ちてしまう - アルコール消毒後は乾かす
消毒液に含まれる水分が残ることで雑菌が繁殖するケースがある - 揮発性が高いため、密閉して保管する
- 火気に注意する
- 刺激があり、肌の弱い人は荒れやすい
アルコールの使用前後は乾かすことが重要です。手を洗った後や、雨でぬれたときは特に意識しましょう。
また、手軽なアルコール消毒(エタノール)ですが、特に火気には十分注意が必要です。
引火点が約13℃という低さ、さらに引火したときの炎は青色なので見えづらく、燃えているということにも気が付きづらいです。
発見が遅れたり、消えたと思っても実は消えていなかった、という事例もあるので気を付けて使用しましょう。
次亜塩素酸水とは?
- 強力な殺菌効果を持つ
- 人体や動物にも無害で安全
- 様々な分野で使うことができる
- 有機物に触れるとすばやく水に戻る
上記の通り、さまざまな細菌・ウイルスに対応し、強力な殺菌効果を持ちながらも人体や動物にも無害な次亜塩素酸水は最近注目されつつありますね。
次亜塩素酸水にもいくつか種類があり、似た名前で混同しやすいもの、除菌の仕組み、効果のある細菌・ウイルスについて解説していきます。
こちらの記事でも次亜塩素酸水について詳しく解説しているので参考にしてみてください。
次亜塩素酸水の種類
次亜塩素酸水とは、食塩水を電気分解することで得られる水溶液です。
電気分解での製法やpH値・有効塩素濃度が厚生労働省により定められており、その違いにより強酸性・弱酸性・微酸性の次亜塩素酸水に分けられています。
- 強酸性次亜塩素酸水
水溶液中に含まれる有効塩素濃度は、20~60ppm(0.002%~0.006%)でPH2.7以下。
0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を有隔膜電解槽で電気分解して得られる。
- 弱酸性次亜塩素酸水
有効塩素濃度が10~60ppm(0.001%~0.006%)、PH2.7~5.0。
0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を有隔膜電解槽で電気分解して得られる。
- 微酸性次亜塩素酸水
有効塩素濃度 50~80ppm(0.005%~0.008%)でPH5.0~6.5の範囲の水溶液。
3%以下の塩酸及び5%以下の塩化ナトリウム(食塩)を含む水溶液を無隔膜電解槽で電気分解して得られる。
引用:荻原歯科医院公式サイト
色々ありますが、微酸性の次亜塩素酸水が最も安全で殺菌効果も高い事が厚生労働省により検証されています。
また、上記グラフのように、次亜塩素酸はアルカリ性に傾くと次亜塩素酸(HCIO)の含有量が減り、代わりに次亜塩素酸イオンの比率が多くなります。
殺菌効果としては次亜塩素酸の比率が高い方が効果があるため、微酸性の次亜塩素酸が最適な状態と言えるのです。
似た名前で「次亜塩素酸ナトリウム」というものがありますが、これな全くの別物です。
皮脂を溶かしてしまうほど強力な物質で、酸性の液体と混ぜると毒ガスが発生するといった危険物です。
性質や使用用途は違うので、誤って次亜塩素酸水として使うと危険なので注意しましょう。
次亜塩素酸水除菌のメカニズム
次亜塩素酸は分子サイズが小さく、電気的に中性です。
そのため細胞壁とその内側の形質膜を容易に透過し、内部の組織に対して直接酸化作用を及ぼすことにより、強力な除菌作用を発揮します。
ウイルスの場合は、エンベロープを持たない強靭なウイルス(エンベロープが無くても生きられる強いウイルス)でも、次亜塩素酸は強い除菌力を発揮します。
除菌できる細菌・ウイルス
次亜塩素酸水は、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムでは除菌しきれない菌にも対応しています。
図には載っていませんがコロナウィルスにも効果的です。
そのうえ安全性が高いので誰にでも使いやすいのが魅力です。
使用上の注意
- 有機物や紫外線に触れると水に戻ってしまう
- 製造年月日から日が経つにつれて除菌力が弱まる(消費期限がある)
- 金属は錆びるので、吹きかけたら必ず拭き取る
有機物に触れた瞬間水に戻るので、汚物を除菌する場合は綺麗に取り除き、その後に次亜塩素酸水を吹きかけるようにしましょう。
また、除菌したいものに直接かけないと効果が得られないので注意。(タオルに吹きかけてからテーブルを拭く⇒あまり意味がありません。)
紫外線も水に戻る原因なので、紫外線を通さない黒いボトルに入れ、日の当たらないクローゼットなどに保管しましょう。
消費期限は長いもので1年、詰め替え用などは3ヶ月~半年となっています。
備蓄しても除菌力がなくなっていく一方なので、できるだけ新鮮な状態の次亜塩素酸水を使いましょう。
金属は錆びてしまうので、金属の除菌にはできるだけアルコールを使うようにしてください。
次亜塩素酸水とアルコール消毒液の違い
アルコール消毒液 | 次亜塩素酸水 | |
---|---|---|
除菌できる細菌 | 芽胞を形成しない主に食中毒に代表される菌 | 芽胞を形成する細菌もOK |
除菌できるウイルス | エンベロープを持つウイルス | エンベロープを持たない(より強い)ウイルスもOK |
安全性 | 肌荒れする程度の刺激がある | 有機物に触れると水に戻る、刺激もほぼない |
メリット | ・すぐに乾燥するので手指につけやすい ・ジェルタイプは持ち運びに便利 | ・除菌できる細菌・ウイルスの範囲が広い ・人体に無害で赤ちゃんにも優しい |
デメリット | ・火気に注意する必要がある ・肌荒れのリスクが多少ある | ・紫外線と消費期限に注意する必要がある ・金属は錆びるので使えない |
より分かりやすいように違いの要点をまとめて表にしました。
両者とも除菌の効果としては申し分ありませんが、次亜塩素酸水の方がより対応範囲が広くて安全性が高いというのがやはり目立ちますね。
ただ、コロナウィルスに関してはアルコール消毒液も対応しており、肌荒れもそこまで気にするほどのものではないので、正直どちらを使ってもいいと思います。
あとは好みと手に入れやすさで選ぶといいでしょう。
金属や紫外線当たる場所にも使いたい場合、ジェルタイプで持ち運びたい人⇒アルコール消毒液
ウェルシュ菌、セレウス菌、ボツリヌス菌、ノロウイルスへ使用する場合、手肌がデリケートな人や使用頻度が多い人⇒次亜塩素酸水
まとめ
- アルコールは、「エタノール」と「メタノール」の違いに注意
- 次亜塩素酸水は、次亜塩素酸ナトリウムと混同しないように注意
- エンベロープを持たないウイルス、芽胞を形成する細胞にも効くのは次亜塩素酸水
- どちらも一定の細菌・ウイルスには効果があるので、好みと入手可能かで選べばOK
それぞれの特徴が分かり、使い分ける基準が理解できたのではないでしょうか?
アルコールも次亜塩素酸水も手指に直接使える安全な除菌剤です。
少しだけ注意事項があるので、それを守って正しく使いましょう(*^^*)
以下の記事でも次亜塩素酸水、アルコールについて解説しています!
今回は、次亜塩素酸水とアルコールの特徴を解説し、徹底比較していきます(*^^*)