みなさんは、手洗いのときに石鹸は使っていますか?
おそらくほとんどの人が、その使い勝手の良さからハンドソープを使用していると思います。
「薬用ハンドソープが品薄だけど、普通の石鹸でも殺菌できるのかな…」
「石鹸ってそもそもどんなものなんだろう?」
コスパや在庫状況から石鹸を使い始めている人も増えており、石鹸について知りたい方も多いですよね!
目次
石鹸で殺菌はできるの?
ここまでで石鹸とはどいうものなのかを解説してきましたが、洗浄力の高いという石鹸に殺菌効果はあるのでしょうか?
花王生活科学研究所の実験
同研究所の実験によると、ごく短い時間で手を洗った場合、普通の石鹸では95%、殺菌効果を謳った薬用石鹸では98%の除菌効果がありました。
この結果から見ても、ごく普通の石鹸での除菌は十分可能です。丁寧に洗うと、除菌効果はより高まります。
引用:石けん百貨公式サイト
花王生活科学研究所の実験によると、薬用の石鹸を使わなくてもごく普通の石鹸でさっと洗うだけで手に付いた菌やウイルスの95%が取り除けました。
つまり、普通の石鹸で「除菌」ができるのです。
手のすみずみまでていねいにこすり洗いしたり爪ブラシを使ったりすれば、効果はさらに高まります。
ただし、菌を殺す「殺菌」はできません。
石鹸は、菌やウイルスを取り除くことはできるが、殺すことはできない。
逆性石鹸は殺菌ができる石鹸?
「逆性石鹸」とは、陽イオン界面活性剤のことで、殺菌剤としてよく知られます。
石鹸という名が付いていますが洗浄力はほとんどありません。
普通の石鹸と逆性石鹸の違いは以下の通り。
普通の石鹸 | 逆性石鹸 | |
---|---|---|
性質 | 陰イオン界面活性剤 | 陽イオン界面活性剤 |
効果 | 洗浄 | 殺菌 |
私たちが汚れ落としに使う石鹸は、水に溶けるとマイナスの電気を帯びて陰イオンとなり、「陰イオン界面活性剤」と呼ばれます。
それに対し、逆性石鹸はプラスに帯電して陽イオンとなり、「陽イオン界面活性剤」と呼ばれます。普通の石鹸とは逆の性質なので「逆性石鹸」というわけです。
陰イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤はそれぞれ逆の性質なので、一緒にすると性質を打ち消し合ってしまいます。
なので、もし「逆性石鹸」で殺菌する場合は面倒でも最初にきちんと普通の石鹸で手を洗い、そのあとで逆性石鹸を使うようにしましょう。
逆性石鹸で殺菌できるしくみ
細菌やカビはマイナスに帯電するタンパク質やセルロースが主成分。
プラスに帯電し、マイナスのものに引き寄せられる逆性石鹸は細菌やカビの細胞表面に強く吸着します。
そして、タンパク質やセルロースを変質させて細胞の構造を破壊し、殺菌するというしくみです。
ただし、細菌とは構造が根本的に違うウイルスには効果がないです。
なのでインフルエンザウイルスやコロナウイルス対策に逆性石鹸は効果がないのです。
石鹸とは?
「石鹸」といっても様々な種類があるので、詳しく解説していきます。
石鹸の起源は紀元前3000年頃(約1万年前)。
羊を火であぶっているときにしたたり落ちた脂肪が木の灰に混ざり、石鹸のようなものができたのがはじまりと言われています。
また、石鹸は洗浄成分が「界面活性剤」でできています。
「界面活性剤」は通常だったら混ざらない水と油を混じり合わせ、汚れをはがして水の中に浮き上がらせて落とします。
この界面活性剤に代表されるのが「石鹸」です。
石鹸の定義
石鹸の定義にはいくつかありますが、国際界面活性会議の用語によると以下のようにされています。
炭素原子を少なくとも8個含む脂肪酸または脂肪酸混合物のアルカリ塩(無機または有機)をさす総称
(阿部芳郎「洗剤通論」1985、近代編集社、P.3)
引用:石鹸百科公式サイト
上記の定義では、洗浄力のない金属石鹸(石鹸かす)も石鹸の中に含めています。
しかし、日常的に私たちが洗浄に使う狭い意味での「石鹸」とは、脂肪酸とアルカリが中和して結合した化合物です。
つまり、脂肪酸ナトリウムと脂肪酸カリウムのことになります。
石鹸の種類
石鹸は、まず大きく分けるとアルカリ石鹸と金属石鹸に分かれます。
- ナトリウム石鹸(脂肪酸ナトリウム)
- カリウム石鹸(脂肪酸カリウム)
私たちが普段、洗浄目的で使用している石鹸がこのアルカリ石鹸です。
「脂肪酸ナトリウム」は油脂を水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)で煮て作られ、固形石鹸や粉石鹸になります。
つまり、ナトリウム石鹸=固形石鹸・粉石鹸ということです。
一方、「脂肪酸カリウム」は油脂を水酸化カリウム(苛性カリ)で煮て作られ、液体石鹸になります。ハンドソープは石鹸であり、液体にしたものです。
つまり、カリウム石鹸=液体せっけん(ハンドソープ)ということです。
- カルシウム石鹸
- マグネシウム石鹸
お風呂で石鹸を使った後、お湯に白いカスのようなものが浮かんだりすることがありますよね。
この白い物体が金属石鹸で、俗に言う石鹸カスのことです。
これは石鹸成分の脂肪酸イオンが、水道水成分や身体の汚れに含まれるカルシウムやマグネシウムと反応して「脂肪酸カルシウム」や「脂肪酸マグネシウム」になるから発生します。
金属イオン(ミネラル)を含まない水、つまり精製水や軟水器を通した水を使えば、金属石鹸は発生しないのです。
液体石鹸(ハンドソープ)と固形石鹸の違い
液体石鹸(ハンドソープ) | 固形石鹸 | |
---|---|---|
性質 | 酸性 | アルカリ性 |
泡立ち | 〇 | × |
コスパ | × | 〇 |
洗浄力 | × | 〇 |
エコ | 〇 | ◎ |
固形石鹸は、泡立ちに時間がかかるのが気になるところですが、それ以外は液体石鹸より優れています。
アルカリ性の方が洗浄力が高いようで、コスパがいいのに洗浄力もあるなんて最高ですね!
また、液体石鹸は薄めて使うと雑菌が繁殖するリスクがあったり、エコの観点からもゴミがかさばるという欠点があります。
好みにもよりますが、洗浄力を重視する今の時期なら固形石鹸がおすすめです。
- 泡立ちやすさと使い勝手を選ぶなら液体石鹸
- コスパとより高い洗浄力を選ぶなら固形石鹸
※以下より、「固形石鹸」のことを「石鹸」と呼んでいきます。
石鹸の特性
石鹸にはほかの界面活性剤(合成洗剤など)と大きく違う特性がいくつかあります。
- 薄まると汚れを放す
濃度50%くらいを下回ると、汚れを捕まえる力を失ってしまう。 - 酸に弱い
石鹸はアルカリ性のため、酸性の物質とは中和されて洗浄力がなくなる。 - ミネラルに弱い
ミネラル分と出会うと水に溶けない金属石鹸に変化してしまう。 - 冷水では溶けにくい
洗浄力の元となっている脂肪酸は20度以下の冷水には溶けにくい。
石鹸が洗浄力を発揮するためには、ある程度の濃度が必要です。
濃度50%付近が一番洗浄力がありますが、見分けるポイントは泡立ちです。
水と石鹸を1:1(50%ずつ)の割合で混ぜると泡立ちが良くなり、同時に洗浄力も最高値となります。
また、石鹸は酸に弱いですが食器についた汚れは大抵が酸性です。
特に酢やマヨネーズ、果汁などの酸味のあるものは石鹸の大敵なので食器洗いにはあまり向いていません。
水にはカルシウムやマグネシウムといったミネラル成分が含まれていますが、このミネラル分と出会うと水に溶けない金属石鹸に変化してしまいます。
日本の水道水はミネラル分が少ないので手を洗うのには問題ありませんが、髪に使うとゴワついたり、きしみの原因になるので向いていません。
そして石鹸が溶けなければ、洗浄力も十分に出ません。冷たい水だと石鹸が溶けづらいので、特に冬場は水よりもお湯で洗うのがおすすめです。
- 泡立ちのいい濃度50%の状態が洗浄力が高い
- 食器や髪の毛を洗うのには不向き
- 20℃以上の温度の水(お湯)を使うべき
殺菌よりも手の洗い方に気をつけよう
家庭での手洗いに殺菌剤は特に必要ありません。
手に付いた菌は普通の石鹸でさっと洗うだけで95%が取り除けます。
手からの感染を減らすためには、薬品による「殺菌」よりも手洗いによる「除菌」に気を配るほうが効果的なのです。
感染症対策というと「殺菌消毒」と思われがちですが、一般的によく用いられる殺菌剤では効果が得られない菌やウイルスもあります。
手や身体を清潔に保つという目的だけであれば、薬効のあるもので洗うかどうかよりも、その洗い方に気を配る方が効果的なようです。
正しい手の洗い方
- 洗いやすいように腕時計や指輪は外しておきます。爪は短く切っておきましょう。
- はじめに流水で手全体を濡らします。(泡立ちを良くして手全体に石けんを広げるためと、皮脂を奪いすぎないようにするため)
- 手に石けんを付け、手のひらで十分に泡立てます。30秒以上かけて丁寧に洗いましょう。
- 指先(爪)を入念にこすります。
- 親指をねじり洗いします。
※特に、指の間、指先、親指などは洗い残ししやすい部分なので、念入りに洗いましょう。 - 手首も忘れずに洗います。
- ぬるま湯以下の流水で十分にすすぎましょう。
※温かすぎるお湯は、皮脂が溶け出してしまうので、手荒れしやすくなります。 - 清潔なハンカチやタオルなどで水を十分拭き取って手を乾燥させます。
普段の手洗いと見直してみるとどうでしょうか?
正しい手洗いは、指先・指の間・親指・手首まで念入りに洗っていきます。
少々時間はかかりますが、丁寧に洗えば効果的な除菌ができるので、みなさんもやってみましょう!
まとめ
- 石鹸で除菌はできるが、殺菌はできない。
- 「逆性石鹸」は殺菌できるが、洗浄力はない。
- 固形石鹸は「脂肪酸ナトリウム」。液体石鹸(ハンドソープ)は「脂肪酸カリウム」。
- コスパや洗浄力が高いのは固形石鹸。
- 手洗いには20℃以上の水(お湯)を使い、しっかり泡立たせるのがポイント。
- 手洗いに殺菌効果は不要。手の洗い方に気を付けるべき。
石鹸といっても色々なものがありましたね。
固形石鹸は泡立ちに少し手間がかかりますが、正しく丁寧に洗えばかなりの洗浄・除菌効果が期待できそうです(*^^*)
この機会に改めて石鹸を使ってみてはいかがでしょうか?
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今回は、需要の高まる石鹸について解説!殺菌できるかどうかを詳しく紹介していきます。