日常的に行っているアルコール消毒ですが、アルコールでも効かない細菌・ウイルスが存在するのは知っていますか?
そんな時に次亜塩素酸水を主成分とした消毒液が販売されています。あなたならどうしますか?
「次亜塩素酸水は手洗いにも使えるの?」
「もしかしたら名前の似ている次亜塩素酸ナトリウムと関係あるのかも?」
今回は、手洗いに次亜塩素酸水は適しているか?次亜塩素酸の特徴と正しい除菌方法について説明していきます。
目次
次亜塩素酸水は手洗いに使えるの!?
次亜塩素酸水を手洗いに使えるかという問いに対して、答えはこちらです。
- 次亜塩素酸水での手洗いはおすすめできない
- 手指衛生にはまず手洗い、あるいはアルコール消毒が1番簡単である
その理由について詳しく解説していきます。
安全性が証明されていない
次亜塩素酸は次亜塩素酸水として市販されています。
そもそも次亜塩素酸水は何からできているのでしょうか。
薄い食塩水・塩酸水を電気分解して作る、次亜塩素酸を主成分とする水溶液のこと
人の健康にも影響がないことから食品添加物殺菌料に認められ、生活のあらゆる場面に使用されています。
食品衛生分野 | 食品・調理器具・厨房での洗浄・除菌 |
農業分野 | ・食物の病気対策(散布用消毒剤) ・防カビ対策 |
医療分野 | ・手術時の手指洗浄 ・内視鏡の器具消毒 |
そのような添加物・殺菌料として使用される場合の次亜塩素酸水は、人体に害がないような濃度・成分規格を守り、使用基準をクリアしています。
一般的に販売されているような除菌・消毒向けの次亜塩素水とは別物です。
例えば次亜塩素水を主成分とした除菌・消臭スプレーを見てみましょう。
引用:Amazon 公式サイト
【成分】次亜塩素酸水
【液性】弱酸性
成分表示は上記のみで、具体的な成分・濃度が分かりません。
キッチン・トイレ・おもちゃなど決められた使用対象に使用するのは問題ないですが、手指消毒として使うのは危険があります。
厚生労働省が発表した感染予防対策の中でも、次亜塩素酸水の除菌・消毒対象 手指に関しては未評価となっています。
引用:ERECTA 公式サイト
実際「万が一手や肌にかかっても大丈夫!」という表記のある商品も見かけます。
しかし、積極的に次亜塩素水を手洗い・手指消毒に使うことはおすすめできません。
手間がかかる
次亜塩素酸水を除菌・消毒に使用する場合は、量・濃度・時間に気をつけなければ、除菌の効果が下がります。
それは次亜塩素酸水に下記のような特徴があるからです。
- 物質が不安定で長期保存できない(有機物・紫外線に弱い)
- 保存状態次第が悪いと急速に除菌効果が下がる
- 少量の使用では効果が期待できない
- 除菌対象物に汚れがあると、その汚れと反応して除菌力が落ちる
次亜塩素酸水は低濃度で比較的身体にも優しく使用することができますが、その扱いには慎重にならなければなりません。
次亜塩素酸水を主成分とする商品ジアニストを手洗いで使用することについて考えてみます。
ジアニストは500ppm濃度の次亜塩素酸です。
水で希釈して様々な部分の除菌・消毒に使用します。使う対象や目的によって濃度を調節できることがポイントです。
推奨はされていませんが、例えばジアニストで手洗いをする場合は下記のポイントを守らなくてはなりません。
- ジアニストを水で10倍に薄める
- 手に汚れがある場合はあらかじめ除去する
- 最低10秒以上掛流す あるいは次亜塩素水に手を浸す
人体に影響のない次亜塩素酸水の濃度は50ppmと言われているため、まずは10倍に希釈する必要があります。
手に土やゴミなどの汚れがついていれば、次亜塩素水本来の除菌力を発揮できません。
手洗いにもきちんと時間をかけなければ、除菌効果は得られません。
次亜塩素酸水を手洗いに使うにはとても手間がかかります。
手指衛生ではまず手洗い、頻回な手洗いが難しい場合はアルコール消毒剤を使用するのが最も簡単で確実な方法です。
なぜ次亜塩素酸水が注目されているのか
次亜塩素酸水を手洗いに使用する場合で考えてしまうと、あまり良いことはないように感じますね。
しかし次亜塩素酸水を正しく使えば、身体に優しく身の回りの除菌・消毒ができるんです!
ここがスゴい!次亜塩素水の特徴とは?
- アルコール・次亜塩素酸ナトリウムでは効果の得られないウイルス・細菌に効く
- 消臭効果が期待できる
- 分解されやすく残留性が少ない
身体にあまり害がなく、そして幅広い細菌・ウイルスに除菌効果を発揮するのは1番嬉しいポイントですね。
次亜塩素酸水の正しい使い方
実際に次亜塩素酸水を使った除菌・消毒方法についてお伝えします。
※新型コロナウイルス感染予防対策として厚生労働省が推奨している方法をもとにしています。
次亜塩素酸水の使用対象はモノだけに限ること、そして濃度・量・時間を守ることが最大のポイントです!
- 目に見える汚れをあらかじめ除去する
- 消毒したいものの表面を次亜塩素水でひたひたにする、あるいは次亜塩素水を流水のように掛け流す
- 20秒以上おいてから拭き取る
次亜塩素酸水の濃度はこちらを参照してください。
拭き取り | 80ppm以上 ※ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かした製品では100ppm以上 |
掛流し | 35ppm以上 |
元の汚れがひどい場合 | 200ppm以上 |
次亜塩素酸の濃度にはppm(パーツパーミリオン)という単位が使われています。
液体の微量濃度を示す単位として使用されることが多いです。
溶液で考える時は1ppm=1mg=0.0001%と考えます。
ジクロロイソシアヌル酸は「次亜塩素酸水をつくる素」として販売されている粉末・顆粒状の主成分です。
プールの除菌剤にも使用されています。
次亜塩素酸水はアルコール消毒のような簡便さはありません。
正しい濃度でたっぷりの量を時間と量をかけることが、除菌・消毒に有効な手段であるとされています。
次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水のちがいは?
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムとの違いについてはご存知でしょうか。
名前も似ているし同じような消毒薬なのでは?と思っていたら大間違いです!
次亜塩素酸水とは似て非なるものです。次亜塩素酸ナトリウムを薄めれば次亜塩素酸水になる訳ではありません。
次亜塩素酸ナトリウムとは
次亜塩素酸ナトリウムは、水酸化ナトリウムに塩素ガスを吹き込んで作られる物質です。
強アルカリ性で、目的に応じ薄めて使用します。
次亜塩素酸ナトリウムが使われている商品では、ハイター・ミルトンが有名です。
次亜塩素酸ナトリウムは、調理器具・食器・衣類の殺菌・漂白や、食品添加物殺菌料として、また医療機器の消毒にも使われます。
次亜塩素酸水 | 次亜塩素酸ナトリウム | |
---|---|---|
ph | 5.0〜6.5 弱酸性 | 12.0以上 強アルカリ性 |
におい | 基本的には無臭 | 強烈な塩素臭 |
使用する対象 | モノ 濃度によっては手肌についても安全 | 衣類やモノのみ |
使用方法 | 原液のまま使用可 | 希釈が必要 |
安全面 | 濃度を守れば手やうがいにも使える | 金属を腐食させる 酸性製品との併用で有毒ガス発生 |
除菌力 | ◎ 次亜塩素酸ナトリウム・アルコールでは効かない細菌もカバー | ○ アルコールでは効かない細菌もカバー |
次亜塩素酸ナトリウムは、ハイターとして日常生活でも漂白・カビ取りに使われているため、身近には感じやすい物質ですね。
次亜塩素酸水と比べるとまったく違う物質であることが分かります。
次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性で皮膚刺激も強く、手指やうがいには絶対に使用できません。
酸性洗剤と混ぜると化学反応を起こし有毒ガスを発生する危険もあるので、注意しましょう。
疑似次亜塩素酸水に注意!
疑似次亜塩素酸水とは、本来の作り方で作られたものではなく、次亜塩素酸ナトリウムをベースに作った全く別の次亜塩素酸水です。
- 次亜塩素酸ナトリウムに酸を混ぜ酸性化した液体
- 次亜塩素酸ナトリウムをただ希釈した液体
このような誤った商品を選択することで、健康を害する危険性もあります。
市販の次亜塩素酸水を購入する際には、以下のポイントの記載があるかをきちんと確かめましょう。
- 製造日・使用期限
- 原料・濃度(pH値)
- 遮光性のある容器に入れられているか
まとめ
- 次亜塩素酸水での手洗いは積極的に勧められていない
- 手指衛生にはまず手洗い、そしてアルコール消毒が1番簡単である
- 次亜塩素酸水は濃度・量・時間に気をつければ幅広い細菌・ウイルスに対し除菌効果が得られる
- 次亜塩素水と次亜塩素酸ナトリウムは全くの別物である
- 次亜塩素水を主成分とする製品を選ぶ時には、その原料・成分・濃度記載を確認する
次亜塩素水は正しく使えば身体にも害がなく、除菌・消毒に有効であることが分かりました。
すこし手間がかかりますが、幅広い細菌・ウイルスに有効であることはとても魅力的ですね。
次亜塩素酸ナトリウムとも区別して認識し、商品選びの際には注意していきましょう。
次亜塩素酸水・次亜塩素酸ナトリウム・アルコールについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください↓↓
次亜塩素酸水は正しく使えば驚くべき効果が期待できる!?
次亜塩素酸と間違えやすい次亜塩素酸ナトリウムについてもまとめました!